請求額の85%の約100万円の解決金にて合意成立

事案
鉄骨構造物の製造会社の溶接担当として雇用していた男性社員がいた。あるとき,業務時間中に部外者である男性数名が職場に訪れ,上記社員を取り囲み騒ぎとなる事態となった。その原因は当該社員の個人的な関係にあった。会社は当該社員に二度と職場に個人的なトラブルを持ち込まないように注意したが,「自分は悪くない」などと述べ反省の態度を示さなかった。溶接という危険の伴う仕事を任せるのはリスクがあると判断し,会社は当該社員を組み立て作業の仕事へ配置転換を命じた。すると,当該社員は配置転換が無効であるなどと述べ争い,最終的には自己都合の退職届を会社に提出して退職した。しかし,当該社員は配置転換が不法行為に該当するなどと主張し,慰謝料・逸失利益等合計約650万円の損害賠償の支払いを求めて訴訟を提起した。
結論
100万円の解決金にて合意成立請求額の85%に削減成功
この事案のポイント
- 労働者側は,①就業規則等に配置転換の根拠規定がないこと,②職種限定の合意に反すること,③配置転換の前に退職勧奨等が行われた経緯があり退職に追い込む目的の配転命令であったこと等を主な理由としていた。
- 会社側は,①溶接から組み立て業務への配転命令は就業規則等の根拠がなくとも雇用契約上使用者に認められた人事権に基づき可能であること,②職種限定の合意は存在しないこと,③退職勧奨等は無関係であること等を主張し,争った。
- 裁判所としては,①,②は認められないが,③については解雇通知を行った経緯等もある為,配転命令が退職を目的とすると認定される可能性を示唆しつつ,一定の解決金を支払うことによる和解を提示した。
- 会社としては,早期解決を重視して,裁判所の和解案に応じて解決を図った。
依頼者の声
この度はご尽力いただきありがとうございました。労働者側の請求を大幅に削減した上での早期解決に導いていただき感謝いたします。
私生活上の交友関係や職務態度が悪くトラブルばかりを起こす社員でした。正直言って辞めて貰いたいというのが強い意向としてありました。ただ,解雇や退職勧奨を配置転換命令の前に行っていたことが,後々裁判所の不利な心証に繋がってしまいました。事前にご相談させて頂いておればこのような事態は避けられたものでした。今後はトラブルが起きそうなタイミングで事前にご相談させて頂きたいと思いますので,よろしくお願いします。