請求額の75%の約100万円の和解金にて和解が成立

事案
都内で美容院を経営する会社でアシスタントとして雇用していた男性がいた。日中はアシスタント業務を行い,終業時刻後はスタイリストを目指してカットの練習などをしていた。美容院では終業時間後,サロンを開放し,自己研鑽の場所と機械を与えていた。しかし,その男性はアシスタント業務も不十分に行い,自己研鑽も真面目に取り組んでいなかった。そこで,あるとき先輩スタイリストが男性の為を思って叱責をしたことがあった。すると,男性は突如として出勤しなくなった。後日,パワーハラスメントを受けて休業しているとして労基署に労災申請を行うようになった。さらには,終業時間後の自己研鑽は業務命令に基づくものであったなどと主張して残業代を請求するようになった。会社はこれを拒否していたところ,男性は会社を相手に残業代とパワーハラスメントによる慰謝料の合計約430万円を求めて訴訟を提起した。
結論
100万円の和解金を支払うことにより和解が成立請求額の75%に削減成功
この事案のポイント
- 先輩スタイリストによる叱責は,怒鳴ったりしたものではなく,その内容も業務上の指導の域を出ないものであった。また,先輩スタイリストは事後的に謝罪を行っていた。総合的に考えると,慰謝料が発生する程のパワーハラスメントには該当しなかった。
- 終業時間後のカット練習は,毎日していた訳ではなく,業務命令に基づくものでもなかった。また,休憩時間も十分に取得できる状況であった。労働者が主張する残業時間は,実際の労働時間より多く主張されていた。
- 実際の勤務状況をタイムカード等の客観的証拠に基づいて行い,労働者側が主張する労働時間は実態より多すぎることの主張立証を行った。
- ただし,営業時間等に鑑みると,一定の未払い残業代が存在したのも事実であった。
依頼者の声
この度はご対応頂き有難うございました。労働者側からは,パワーハラスメントの訴えから始まり,その後,残業代の請求訴訟にまで発展し,非常に驚きました。先輩スタイリストは気の良い青年で他の多くのアシスタントより慕われている兄貴分的な存在でした。パワハラと非難されるような言動は行っていないことは明らかでした。また,従業員にとってフレキシブルな働き方ができると考えて,労働時間は厳格に管理しておりませんでした。業務終了後のサロンの開放も自己研鑽のためによかれと思って行っていた措置でした。しかし,今回,当社がよかれとおもっていた措置等が法律に照らすと問題となることがよく分かりました。法律を知らないというのは恐ろしいものです。勉強をさせてもらいました。最終的には,労働者側の請求を大幅に削減する形での解決となり納得感を持てた解決に至りました。今後ともご指導をお願い申し上げます。